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    事業を通じてアートによるコミュニケーションを生み出したい。オフィス空間にアートを提案する「ArtScouter」チームの思い

    事業を通じてアートによるコミュニケーションを生み出したい。オフィス空間にアートを提案する「ArtScouter」チームの思い

    アートに魅力を感じたメンバーが、多くの人にも身近に感じてもらいたいという想いからスタートした事業が、39wroksから生まれました。AIを活用しオフィス空間に最適なアート作品を選べるプラットフォーム「ArtScouter(アートスカウター)」です。

    今回はArtScouterのプロジェクトメンバーであるNTTドコモイノベーション統括部根岸次郎さんと蒲原凪さんにサービスの原点や事業化に至る過程、これから実現したいことをお聞きしました。

    AIを活用して空間に最適なアートを提案する「ArtScouter」

    ArtScouterは、AIを活用しオフィス空間に最適なアート作品を選べるプラットフォーム。什器メーカー等のオフィスをデザインされる方やオフィス管理担当者が「アートに求める効果/どのようなイメージにしたいか」の項目を選択することで、オフィスに求めるものに近いアート作品をピックアップできます。また、登録されているのは国内トップギャラリーに所属しているアーティストの作品が中心のため、信頼できる価格設定となっています。

    ユーザーは「アートに求める効果」と「オフィスをどんなイメージにしたいか」を選択します。アートに求める効果は、リラックス、明るい、クール・知的、クリエイティブ、力強さ、かわいい・ポップの6パターンから選択可能。

    オフィスをどんなイメージにしたいかは、シンプル、ナチュラル、カジュアル、モダン、スタイリッシュ、エレガンス6パターンから選択できます。効果やイメージを選択すると、登録されているアートの中から条件に合ったものが表示されます。

    項目を選択すると、AIによって絞り込まれたアートが複数レコメンドされます。そこからさらに価格やサイズで絞り込んで最終決定する流れになっています。ArtScouter上でアートを選択すると、什器メーカーのデザイナーが顧客に提案しやすいよう、選んだ作品の提案書をそのままPDFで出力できるようになっています。

    ArtScouterの強みは、アートの専門家の視点によるアートの分類を学習させたAI。ArtScouterはNTTドコモの画像認識技術を活用しており、データが増えることでアートとのマッチング精度は向上していく見込みです。

    アートとオフィスという、日本ではなかなか馴染みのないテーマのサービスであるArtScouterは、どういったきっかけで生まれたのでしょうか。根岸さんは、「サービスの原点は数年間のニューヨーク勤務にある」と語ります。

    根岸「ニューヨークでの私の仕事の中にIR業務があり、北米の様々な投資家のオフィスに伺う機会がありました。すると、どのオフィスにも必ずアート作品が置いてあった。その理由を一緒に仕事をしていた現地の証券会社のコーディネーターに聞いたところ『アートがあるとオフィスを訪れるお客様のおもてなしになり、社内コミュニケーションの活性化にもつながって、さらには良い投資にもなるでしょう』、と教えてもらいました」

    ニューヨークで目にした、オフィスにアートがある光景。日本に戻ってきた根岸さんは、なぜ日本企業のオフィスにはアートがないのだろうと純粋に疑問に思いました。当時、イノベーション統括部ではなく、国際事業部の仕事に携わっていた根岸さんは、新しく社内の新規事業立案プログラムが始まったことを知り、アートに関する事業を作ろうと参加を決めます。

    アートでの事業化に立ちはだかる壁

    一口にアートに関するビジネスといっても、様々な可能性があります。中でも、根岸さんが新規事業のアイデアとして着目したのは、アート作品の「値付け方」でした。過去にドコモのクレジットカード事業の企画部門で経験した信用情報のテクノロジーが活かせるのではないかと考えました。

    根岸「アート作品の価値は専門家ではない限り、市場価値や適正価格がわからない。さらにクローズドなマーケットの中で作品の価格を操作できてしまう不透明さが課題になっていると聞いたことがありました。こうした作品評価の曖昧さを解決するために、ビッグデータ分析の手法が活かせるのではないかと考えたんです」

    「アートの価格を適正化する技術には価値があるはずだ」と考えた根岸さんは、一緒にプログラムに参加したニューヨーク勤務時の同僚に声を掛け、早速仮説検証を開始。値決めのルールや競合サービスのリサーチをしながら、主なターゲットとして設定していたギャラリーに、作成したプロトタイプを使ってもらい、アイデアの価値を確かめていきます。

    根岸「客観的に作品の適正価格がわかれば、使ってもらえるはずだと考えプロトタイプを作りました。しかし、アーティストのキャリアと自身が培ってきた直感を組み合わせて作品の価格を決定するギャラリーの方々の反応は『あまり参考にはしないかも』というものでした。自分が考えている構想は、現場のニーズを捉えられていなかったんです」

    一度、プロトタイプを作ってはみたものの、改めて誰に対して、どのようなサービスを届けるのか、どのように収益化するかなど、スタート地点に立ち戻って悶々とする日々が続いたそうです。

    事業を通して実現したいことへ立ち戻る

    チームが暗中模索を続ける中、当時新入社員でNTTドコモ埼玉支店にいた蒲原凪さんが社内イントラネットで知ったArtScouterのチームにコンタクトをとり、メンバーに加わります。そのタイミングで、改めて各メンバーが事業を通じて達成したいことを話し合ったそうです。

    蒲原「話したあった結果、共通しているとわかったのは『アートに触れる人を増やす』こと。その共通点から、『アートが足りていない場所はどこか』という問いを新しく立てました」

    根岸「アートが足りない場所を考えてみた際に、日本企業のオフィスにアートが足りないと感じたことを思い出しました。日本企業のオフィスにはなぜアートが置かれていないのか。その理由を探り始めました」

    日本のオフィスにアートが飾られない理由を探るために、チームは企業のオフィス管理の担当者や什器メーカーへヒアリングを実施。その結果、アートを導入しようと考える担当者にとって、アートの金銭的な価値がわかるかどうかよりも、アートを設置することで従業員にどのような影響があるのか、そのためにはどのようにアートを選べばよいのかという情報のほうが重要ではないか、という仮説にたどり着きました。

    改めて、サービスとしての焦点が定まったチームはサービスのユーザーを「什器メーカーなどのオフィスをデザインする会社」に想定し、事業案の具体化を進行。紙でのプロトタイプを作ってNTTドコモの総務部にアートの導入提案を行い、オフィスにアートの試験導入を実現。仮説に対する手応えを掴んだ上で、社内の新規事業開発プログラムの最終プレゼンテーションへとのぞみ、優秀賞を獲得しました。

    事業を通じて「アートによるコミュニケーションを増やしたい」

    優秀賞を獲得した事業案は、その後会社の支援を受けて事業化へと進みます。ArtScouterは、プロトタイプ開発の時点から協力してもらっていたアートアンドリーズン株式会社やオフィスデザイン会社と連携してデジタルのプロトタイプを作り実証実験を続けました。ArtScouterのチームは、様々なユーザーとコミュニケーションする中で、新たな課題に直面します。

    蒲原「もともとアートに関心を持っている方からの反応は良好でした。プロトタイプを使った提案でアートを購入頂いた企業もいて実証実験は成功といえました。ですが、これまでアートへの接点を持っていなかった方に、オフィスにアートがあることの価値を理解してもらうのは想像していた以上に難しいこともわかりました。実際にはオフィスにアートがあることの良さを体感したことがない企業の方が大多数です。この課題を解決するために、アートが従業員にどのような作用をもたらすのかについての情報発信を行うオウンドメディアをつくることにしたんです」

    アートが働く上で有効に作用することを伝えるべく、2019年4月22日に「アートとはたらく」を紹介するWebマガジンART HOURSの運用を開始。アートを導入したオフィスの事例やその企業のインタビュー、さらにアート×ビジネスに関するトピックとしてアートを購入する際の会計処理の方法などのコンテンツを掲載し、ビジネスに影響を与えるアートの価値を発信しています。

    ART HOURSの公開から1か月後の2019年5月21日に、AIを活用してアートを選定するプラットフォームであるArtScouterの提供を開始しました。

    この事業の目的ははアートに関するビジネス上の知識を届けるだけではありません。イベントの開催などを通じて、販売側がアートの魅力や文脈を理解して購入者に提供できるようにと働きかけています。その背景には「アートによるコミュニケーションを増やしたい」というチームの思いがあります。

    根岸「ArtScouterは、オフィスデザイナーの方々を中心に販売パートナーになっていただき、オフィスにアート作品を届けています。しかし、機能性がはっきりとわかる椅子や机のようにはアート作品を販売できるわけではありません。アーティストの方のバックグラウンドやアート作品に込めた思いを理解してもらった上で、空間に最適なアート作品をお客様に提案してもらいたいと考えているんです。」

    根岸さんたちが目指しているのは、アートがもっと身近になり、アートをきっかけとしたコミュニケーションが生まれる社会です。

    今はオフィスの中に当たり前のようにある観葉植物も、たくさんの方が「なぜ植物があるとよいのか」を客観的に説きながら広めてきた経緯があります。日本企業のどのオフィスにもアートがある。ArtScouterの成長によって、そんな光景が未来の当たり前になるかもしれません。

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