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    MRで世界中の建築を効率化する。世界初の鉄骨製造支援ソリューション「L’OCZHIT」の展望

    MRで世界中の建築を効率化する。世界初の鉄骨製造支援ソリューション「L’OCZHIT」の展望

    2020年東京五輪の後押しもあり、活況を見せる建設業界。高度な技術力を背景に、製造業は日本が世界を牽引してきた分野でもあります。一方で、熟練の技術を持つ職人の高齢化、新規就業者の離職、人員の国際化といったように、現場に起きている変化は明るい話だけとは限りません。

    「目で覚える」という職人技の世界だけでなく、技術力をゼロから効率的に習得し、複雑な製造や組み立てを誰もが短時間で出来ることを目指す。その思いを胸に39worksから生まれたのが、IoTゴーグルを活用した建築鉄骨業製造支援ソリューションの「L’OCZHIT(ロクジット)」です。

    すでに鉄工所や建設現場での利用も始まっているロクジット。「世界的に見ても類似するサービスは把握していない」というユニークなソリューションを開発するチームの立役者に話を伺いました。

    3DCGデータを活用できるBtoB市場はないか?

    NTTドコモのイノベーション統括部に所属する山﨑健生さんは、来たる「5G回線」時代を見越したサービスを作りたい一心で、現在の部署へ異動しました。「自由に企画をしていい」と言われ、山﨑さんが目をつけたのは、元から興味のあったVR関連のサービス。

    「仮想空間や3DCGを使ったプログラミングを大学時代から個人的にやっていたんです。最初はVRを活用したサイクリング、旅行、不動産や美術館の内覧などの企画を提出していたんですが……あまりしっくりこない気がしていて。まだコンシューマー向けのデバイスも高価で、導入のハードルも高い頃です。そこで、一社ずつの課題を解決することを目指し、デバイスごと導入してもらえることが望めるビジネスユースに切り替えたんです」

    当初から山﨑さんの頭には「技術を習得できるプラットホームにしたい」という思いがありました。たとえば、ピアノの弾き方をMRでなぞれるような学習支援系サービスに面白みを感じていたからです。

    「色々な業界を見る中で、VRやMRのサービスを作るならば、もともと3DCGのデータを持っていることが重要だと考えました。制作コストが大きく変わってくるからです。たとえば、自動車やマンション業界も該当しますが、彼らは『顧客にプレゼンする』というニーズがあるため、データの作り込みに費用をかけます。それを利用するとデバイス側に求められる性能も高くなるなど、あまり広がりが望めなかったのです」

    数々の領域をめぐる中で、最も直接的に顧客の課題解決ができる場所として、山﨑さんは「建築鉄骨業」に着目します。製造業系ならば、現在は3D CADデータを使用するのが一般的で、華美な装飾もなく、流用しやすいメリットがありました。

    その折に、39worksで農業サービスの“Fresh First”を進めるチームから紹介されたのが、一緒に取り組みをすることになった高知県の宮村鉄工。彼らは先端技術を取り入れることに意欲的で、業務改善や効率化につながる打ち手を模索していました。

    「鉄工所における重要な課題の1つは製造ミスによる鉄骨の出戻りです。鉄工所で作った鉄骨製品を、建設現場に持っていってから間違いが発覚すると、運搬費や人件費などが全て無駄になります。事前にその費用は見積もれるものではありませんから、鉄工所の損失になってしまう。そのロスをなくしたいというモチベーションがあったんです」

    製造現場の「負の連鎖」を効率化で断ち切る

    製造ミスを防ぐためには検査が欠かせません。しかし、人員をかけて入念にするほど作業量が増え、残業も増えてしまいます。人員がたくさんいれば問題ありませんが、若手職人の離職も増えてきており、十分な人員を確保できる鉄工所ばかりではないそう。

    さらに、鋼材の検査は製造の知識やスキルを持った人でなければ難しいことから、肝心の製造に割ける職人も減ってしまいます。かといって、製造に人員を回せば、検査がゆるくために出戻りのリスクが高まる……という負の連鎖が起きていたのです。

    「鉄工所の規模に関係なく、あらゆる企業で似たような課題を抱えているようです」と山﨑さん。

    そこで、ロクジットの出番です。ロクジットは、建設現場で使われる鉄骨専用3D CADデータ(BIMデータ)を専用サイトにアップロードすると、使用する鉄骨ごとにデータを分解。鉄工所では、IoTゴーグルで分解データとリアルな母材をMRで重ね合わせることで、完成形を見ながら組み立てや検査ができる仕組みです。鉄工所での溶接などを行いやすくし、取り付け位置を確実に把握することで、従来よりも正確性・作業性をアップできるのです。

    リアルにある母材に完成品のCADデータをMRによって合わせることで、溶接位置の正しさなどを把握しやすくし、製造や検査にかかる時間を減らすことができます。

    そのスピードは、この道30年のベテラン職人が50分かかって作り上げる製品であっても、技術の習熟度が高くない一般事務員が15分程度で完成できるまでに。同様に、検査にかかる時間も短縮できます。その特徴から、「L型」「Z型」というように鋼材に使われるアルファベットを元に、効率的に仕事をこなして「6時にexit(イグジット)」を狙った「L’OCZHIT」という名前が決められたそう。

    しかし、正確を期するためにも、ロクジットで映し出すMRデータにズレは禁物。データを正しく表示するための開発が課せられていきました。

    「鉄骨は大きいものだと15m以上のものもあります。すると、IoTゴーグルを見ながら少し歩くだけで、CGと現物の位置がずれてしまうんです。これを補正できる技術を開発するために、月に一度は高知を訪れ、3日ほど泊まり込んで修正を繰り返しました。高知には十数回は行ったでしょうか。結果的に、データ位置のトラッキング精度を上げるための工夫に関して、いくつか特許を出願しています」

    検査業務に大活躍、残業が減り、採用にも効果

    ロクジットは2018年6月に有償トライアルを開始し、そのフィードバックを反映した上で、2018年12月1日からは一般提供もスタートしました。

    現場に導入されることで、山﨑さんたちが想定していた用途や希望とは、また違った良さが見えてきたといいます。当初想定していた熟練工などの溶接作業の効率アップよりも、新人社員たちのサポートアイテムとしての需要が高く評価されたのです。

    「効率的な検査ができるようになり、残業時間が減ったというお声がけはよくいただきますね。会社見学に来た高校生に『こういったデバイスを使用します』と案内したところ、その後の採用にもつながったそうです。若い人たちは検査のサポートなどから行うのが一般的ですが、実際に図面を見てチェックしていくのも大変ですから、安心材料になったのでしょう。現在は検査を主目的として、さらに業務を効率化できるような製品にしていこうと考えています」

    今後は検査業務がより簡単に行えるようにシステムを改修するだけでなく、より導入しやすい形にしたいといいます。たとえば、現在のようにIoTゴーグルを通して見るだけでなく、スマートフォンやタブレットなどの既存デバイスでも使えるように、搭載機能のヒアリングを深めているとのこと。

    「まずは堅実に国内での販売を進めたいです。大きな目標としては『海外へ行きたいね』とチームのみんなとは話しています。たとえば、海外の鉄工所で使ってもらったり、現地工場での検査で使ってもらうことができればと。それは十分に可能なソリューションだと感じています」

    日本の労働人口が減り、担い手が減っていく中では、少ない人員の効率的な作業が求められていくことは想像に難くありません。その際に、技術習熟度が高くない人であっても作業がしやすいロクジットのソリューションは生きてくることでしょう。

    「ロクジットを使うことで、外国人就労者も作業がしやすくなる可能性が高まると予想しています。まず、日本語で書かれた図面を読み解けるようになるまでの時間を短縮できる。そして、作業員が完成品のイメージを共有しやすくなることで、求められるクオリティに近づけるからです」

    また、日本ではなく外国での活用も視野に入れています。外国では人員こそ用意できるけれども、良い条件の現場に次々と移ってしまう現状があるそう。そこで、ロクジットを用いて現場に必要な技術を会得し、すぐ作業にかかれることは、人材活用の面でも有効といえるのです。

    BtoC向けから転換し、建築鉄骨業という技術が輝く場所を見つけたことで生まれたロクジット。今後、日本が負っていく課題に対しても先手を打ちながら、「建築」という万国共通の産業においても可能性を宿す発展性に満ちています。

    まさに、39worksの目指す「未来の“あたりまえ”を創りたい」にも当てはまるサービスといえるでしょう。私たちの見えないところで、着々と世界を変えていく。ロクジットの野望は、まだまだ建築中です。

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