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人・モノを大切に見守るために。位置検知プラットフォーム「ロケーションネット」の可能性

人・モノを大切に見守るために。位置検知プラットフォーム「ロケーションネット」の可能性

人やモノの位置を特定するために、私たちはスマートフォンに内蔵された「GPS機能」を日常的に使っています。

位置情報は道に迷ったときや物を失くしたときに役立つだけではありません。集めた情報を時系列で見つめると、人やモノの移動をより快適にするための手がかりもみえてきます。街づくりや交通網の整備、社内動線の改善などさまざまな領域で、GPSによる位置情報を活用する動きが進んできました。

しかし屋内での計測が難しく、電力の消費量が多いなど、GPS機能にも課題はあります。そんなGPSの苦手領域を補完するのが、39worksから生まれた位置検知プラットフォーム「ロケーションネット」です。「ロケーションネット」では、特定のエリアに検知器を設置し、専用のタグを人やモノに付与することでBluetoothで位置情報を計測できます。

屋内でも位置が把握でき、タグの電池もGPSに比べて長持ち。子どもや高齢者の見守りから物流管理まで、幅広い用途が期待されています。

「ロケーションネット」は、神戸市や全日本空輸(ANA)との実証実験など、現場での試行錯誤を経て、昨年10月のローンチに至りました。今回はそんな開発チームの道のりを探っていきます。

位置情報データを用いた課題解決のきっかけ

今回、話を聞いたのは「ロケーションネット」の企画・開発に初期から携わってきた、イノベーション統括部の加納出亜さん。

立ち上がりの最初から、「ロケーションネット」の形が見えていたわけではありません。現在の形に至るまでには、様々なハードルがありました。

最初は、部署内で新規事業に向けたディスカッションを重ねるうちに、プロジェクトの輪郭がみえてきたそうです。

「社内のアセットとアイデアの掛け算で、何らかの課題解決をしたいと考えていました。データにまつわる技術の活用について、議論していたんです。ユーザーの基地局データを用いた『モバイル空間統計』や、画像認識・言語解析を使って、観光や旅行関連のアプリケーションを開発しようと、パートナーの方とアイディアを膨らませていきました」

観光や旅行分野での課題解決を考えるなかで、加納さんたちのチームは自治体による公共データの活用促進に関する取り組み「オープンデータ」に着目。オープンデータや民間企業との協業に積極的な神戸市に提案し、街の活性化に向けた事業づくりを考え始めます。

「これまで神戸市で実践されてきたオープンデータの施策と私たちのアセットを組み合わせ、街づくりに貢献するのが狙いでした。メンバーが神戸市を訪れ、講習やハッカソンなどを開催したり、観光用のアプリケーションのプロトタイプを作ったりと、事業づくりに向けた小さなトライアルを繰り返していきました」

自治体と連携し、市民の安心安全を守る

様々な可能性を模索する過程で、神戸市からは「観光や旅行以外の地域課題にも取り組みたい」という新たな相談も寄せられました。加納さんたちは、改めて解決すべき地域の課題についてヒアリングを実施。

「元々神戸市には、市民の安心安全を守りたいという強い意思がありました。安心安全を守るための取り組みを模索する中で、ドコモの位置情報技術を信頼してくださっていたこともあり、子どもの見守りに関して何かできないかという話に繋がっていったんです」

「見守り」を軸にアイディアを練り、加納さんたちは「神戸市ドコモ見守りサービス」の設計を固めていきます。同サービスは、タグをもった子どもが受信機や地域ボランティアのスマートフォンとすれ違うと、子どもたちの位置情報が保護者のスマートフォンに通知されるという仕組み。

受信機は地元スーパーや公共施設にも設置されているため、地域内の広い範囲をカバーしています。また、地域住民は「見守り応援隊アプリ」をスマートフォンにダウンロードすれば、「見守り隊」として位置情報の提供に貢献できます。まさに地域全体で子どもたちの安心安全を支えるためのサービスです。

さっそく加納さんたちは半年後の実証実験に向けて開発に取りかかります。取り組むべき課題やサービスの設計は定まったものの、開発や実験に向けた様々な困難があった、と当時のことを振り返ります。

「コストやスピードを考えて導入した会社の製品を取り入れたことで、予期せぬ不具合が発生することもありました。デバイスが思い通りに動作せず、社内のメンバー人間がで必死にで原因を調査したり、故障対応のために交代で見張りをすることも時には必要でした。

デバイスを開発する以外にも、街中に設置する際にも様々な苦労がありました。神戸市の協力があったので、住民の方々の理解は得られたのですが、受信機を設置する際に電源が足りない、あるいは電圧数が想定と異なるといった設備面での課題もありました。IoTを現場で実践していく難しさを体感できました」

技術開発や街への実装における課題も乗り越え、チームは開発の開始から半年後の2016年春に「神戸市ドコモ見守りサービス」の実証実験をスタートします。すると、実証実験の対象外の複数の地域からも導入を望む声が挙がるなど、反響が続々と届きました。

「『塾帰りに通知があって安心した』や『大人用にもほしい』など、保護者の方々からは嬉しい声を沢山いただいたんです。位置情報を発信するタグを定期券に貼っていた方からは、『定期券を失くした際にどこで落としたか特定できて助かった』など、想定外の使い方を耳にすることもありました(笑)」

もちろん、寄せられた意見はポジティブなものばかりではありません。加納さんの元に寄せられた要望からは、位置検知の精度向上や事前の機能説明などの課題が浮かび上がってきました。

「利用者の方からは『特定の場所で繋がりにくかった』や『位置表示がずれていた』といった指摘もありました。精度向上のための改善は不可欠です。ユーザーの方に『どこまでが限界か』を、正しく伝える努力も欠かせないとわかりました。

『ロケーションネット』ではあらかじめ設置した受信機やスマートフォンからタグを感知します。ですが『どこにいても位置情報がわかる』と、利用者のみなさんが理解されていることも多く、技術的な限界を正しく伝える難しさを感じました」

ANAとの実証実験で掴んだ手応え

神戸市との実証実験がスタートしてから半年が経った頃、事業化に向けた動きが本格化し始めます。

「事業化に向けてチームが意識したのは、最終的により安価に技術を提供できるよう、可能な限りいろんな用途に対応できるプラットフォームを構築することです。神戸市で実践した、子どもの見守り以外の利用パターンを模索しました」

事業化に向けた動きを続ける中で、ドコモ社内のオープンイノベーション担当から紹介を受けたことがきっかけとなり、ANAとの話し合いが始まりました。

「当時、ANAは、人手の必要な作業をテクノロジーで代替し、従業員の負担を減らせないかという課題を抱えていました。そのためにドコモの技術ををどう活かせるか、担当者は空港に何度も足を運び、現場に近い立場の方と議論を深めていきました」

神戸市との取り組みから得た知見も活き、事前の計画や開発はスムーズに進行。話し合いの開始から4ヶ月後には、空港内で貸し出す車椅子やベビーカーの位置をスマートフォンから確認できるシステムが完成し、実証実験を開始。

「従業員の方からは『これまで勘に頼っていたので楽になった』や『オペレーションを簡略化できて嬉しい』など評判も上々でした。位置情報を検知したポイントを時系列で追うと、可視化されなかった乗客の動きがみえてくる。業務改善だけでなく、データ化による新たな可能性も見えてきました」

本格的な事業化と「ロケーションネット」のこれから

ANAの実証実験も順調に進むなか、2017年の春頃には『ロケーションネット』のローンチが正式に決定。事業化に向けて、社内の手続きを行う段階に移ります。

「39worksはサービスをなるべく小さく素早く立ち上げ、お客さまに使っていただきながら、改善のスピードを高めてきました。『ロケーションネット』についても同じ。適正なサイズで素早く顧客にサービスを提供できるよう、社内調整を進めていきました」

2017年秋のローンチに向けて、加納さんたちチームは社内調整と並行して外部との商談を始めます。顧客からの相談を待つのではなく、思いついたソリューションと相性の良さそうな提案先には積極的に足を運びました。

「様々なお客さまと話すことで、発想が広がりました。中には、最初は突飛な発想に感じるお話もあったのですが、どんなお話も『なんとかなるかもしれない』と捉えて、一度は実験してみるようにしていました。そこから先進事例が生まれる可能性もありますから」

こうした姿勢で様々なニーズに向き合ってきたことで、ローンチ後にはキッザニアの施設内での見守りや北海道で牛に装着する、マラソン大会の選手のウェアにつけるなど、当初は想定しなかった領域での事例が広がっているそうです。

昨年10月に「ロケーションネット」としてサービスをローンチしてからは、社内外から問い合わせも増えているそうです。加納さんの属するイノベーション統括部では、法人営業部と連携しながら、現在は技術営業の育成にも力を入れています。数多くの事例に対応し、プラットフォームとしての可能性を広げていきます。

技術が進歩することで、「ロケーションネット」はさらに進化する可能性もあります。加納さんは実証実験での経験を振り返りながら、位置情報を特定する精度の向上や送受信される情報量が拡張されることで、さらに可能性が広がると考えています。

「『ロケーションネット』は屋内での位置検知には優れていますが、現状では『部屋のどこにいるのか』まではわかりません。部屋の隅にいるのか、中央にいるのか、さらに細かな位置情報が把握できるレベルまで精度が高まれば、工場内の緻密な業務管理に利用するなども可能になるでしょう。

実証実験では『人が倒れていないかなど身体の状態も知りたい』という声も挙がっていました。今は場所の情報しかタグに載せられていませんが、センシング技術を活用すれば取得できる情報はさらに充実させられるはずです。そうすれば、『ロケーションネット』の用途はさらに広がっていくのではと期待しています」

「ロケーションネット」が生まれる背景には、絶えず現場の声に耳を傾け、新たな「見守り」の実現に奔走する加納さんたちチームの姿がありました。事業化に至るまでの道のりは、39Worksの掲げる“小さく試して大きく育てる”を体現していたといえます。

人やモノ、動物まで、あらゆる大切なものを見守るのが当たり前となる社会に向けて、「ロケーションネット」の挑戦はまだまだ続きます。

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