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39Meister事例紹介 [nellco]

39Meister事例紹介 [nellco]

nellco 石井氏(左)
39works 菊地大輔氏(右)

近年盛り上がりを見せるIoT(Internet of Things)など、ソフトウェアを中心としていたベンチャービジネスが急速にハードウェアを手がけ始めている昨今。しかし、アイデアにあふれた数々のスタートアップ企業の前に立ちはだかるのが、回路の設計といった技術的な障壁や、量産を行うためのパートナー探しなどの現実的な問題の数々です。

そうした問題を、独自に築き上げたナレッジやネットワークを使って解決し、スタートアップ企業のアイデアをよりダイレクトにかたちにすることをお手伝いする「39Meister」。今回はその実際の事例として、ハードウェア製作プログラム「Field TechUP Program」でグランプリを受賞し、現在製品化に向けてプロジェクト進行中の幼児向けIoT玩具「nellco」をご紹介します。

公園でもゲーム機で遊ぶ子供たち。「nellco」の原点は“そんな光景を変えたい!”という熱い思い

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石井:
nellcoは粘土とコンピューターを組み合わせたデジタル玩具です。スマートフォンとbluetoothでつながるモーター、スピーカー、LEDライトなどのユニットを、子どもたちの作った粘土に埋め込むことで、粘土に動きを持たすことができるようになり、今までにないような遊びができるようになるんです。

―― 石井さんがこの「nellco」を作ろうと思ったきっかけは?

石井:
公園にサッカーボールを持ってきているのに、座ってスマートフォンやゲーム機で遊んでいる子供たちを見かけることがとても多いんです。私はそうした光景に抵抗があって、あるとき子どもたちに直接聞いたことがあります。友達同士でルールを決めて遊びを考えるのは、どう?と。そうしたら「そんなことよりゲームのほうがおもしろいよ」と言われてしまいました。でも、話しているうちにスマートフォンを使って体を動かすような遊びがあったら、やってみたいという意見がでてきたんです。例えば鬼ごっこで相手の居場所がスマートフォンで分かるとか。

―― そこで「nellco」を思いついたんですね。

石井:
いえ、最初に開発したのはnellcoではなく、足につけて走ったり、ダンスをしたりすると音が鳴るという製品でした。私は趣味でダンスをしていたので、音楽を作る感覚でダンスができたらなと思いました。当時私はウェブのアプリやスマートフォンのアプリの企画や開発をしていたので、プログラムの知識はあったのですが、ハードウェアの知識は何も無く、開発にはとても苦労しました。そこからハードウェアの製作支援をしてくれるというプログラムを紹介いただいて「39Meister」の菊地さんと知り合ったんです。

―― 菊地さんから見て、そのダンスをすると音がなるデジタル玩具はいかがでしたか?

菊地:
子どもたちは面白がって遊ぶだろうな、と想像できました。しかし、プロダクトとしてこれからどうしていくか、というストーリーが描けていないように感じました。 “最終的に何をやりたいか”というのが不明確でした。売って成功したいのか、それとも子どもたちが良いと言ってくれるプロダクトが作れればそれで満足なのか。

企画・開発・製作支援以前、なんと“人生相談”からのスタート

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―― 製品や企画だけでなく、想いを大切にする

菊地:
やはり気持ちが大切だと思います。なぜ実現したいのか、なぜ子どもむけのプロダクトに興味を持ったのか。作る話の前に、そういった「想い」についてシェアしていただきました。その結果、石井さんはかなり強い意思と想いをお持ちであることが分かった。ぜひ、それをかたちにして欲しいと考え、支援を決定しました。その後、そのかたちとして、ダンス向けのプロダクトが本当にベストなのか、議論をしました。私から見ると、石井さんはまだ“ダンス”と“子ども”という2つのテーマの間で揺れているように見えたんです。どちらかにフォーカスしないと、プロダクトとしての魅力がぶれてしまうと客観的に考えました。そこで、議論を重ねた結果、「子供向けにもっとシフトしよう」となり、最終的に今のnellcoの形へとピポットすることを決断しました。

石井:
私は子どもの頃、粘土が大好きで、自分の発想でどんなものにも姿を変えられる、想像の世界の物も作ることができるおもちゃだと思っています。しかし、一度作られた粘土の完成物は、その後そのまま放置されるか、また丸めて違う形に生まれ変わるということの繰り返しでした。そこで思いついたのが、IoTの技術との組み合わせでした。粘土で作った恐竜の目が光らせられないか。粘土で作った車のタイヤがモーターで回ったら面白い。どんどんとアイデアが出てきて、実際にプロトタイプを作ってみようという話になりました。

菊地:
求められる機能要件を整理するのは、実は難しい作業です。ただ絵を描くだけでなく、ユーザがどう操作するかも考えながら描かなくてはならない。しかし、その中でも、きっと子どもはこう使うだろうという仮説を立てて、ミニマムなスペックのプロダクト(MVP、Minimum Viable Product)を作る提案をしました。

石井:
プロダクトの機能というものは、自分たちが設計して、その通りに作るものだという先入観を持っていました。しかし、「何を載せるかは、君ではなく実際のお客さんが決める事。今回のお客さん、つまり本当の子どもに、しかもより多くの子どもに、使ってもらってフィードバックを得るべきではないかな。」というアドバイスを頂きました。

菊地:
いわゆるPoC(Proof of Concept)という工程です。石井さんは、実際に様々な年代の子どもたちに、プロトタイプを使ってもらいました。その結果、粘土の中に埋め込んで欲しい小型デバイスなのに、粘土の外に置かれてしまったり、我々の想定外の使われ方をすることがわかりました。一方、多くの子ども達が笑顔で「動く」粘土作りを楽しんでいることが印象的でした。

石井:
飛行機型の粘土にプロペラを付けて、それが実際に回ったら、子どもは興奮するんです。それを見た子どもが、今度はバースデーケーキを作って、ロウソクの部分にLEDを立てて光らせたり。子どもたちにとっては、このプロダクトは単に光ったり、回ったりするデバイスでしかないのですが、しかしまさにこれこそが、子どもの発想力と最新の技術が融合するプロダクトなのだと、実感しました。

菊地:
実際のユーザの使い方を見て、これは行ける!と一旦感じると、次はユーザから出されたフィードバックやプロダクトの不具合が目につくようになります。さて、どう解決すればいいのか、そもそも解決できるのか、ひたすらそれを考える段階に入ります。しかし、次のバージョンのプロトタイプを作るのはそう簡単ではない。実は検証用のプロダクトは、コストや時間を考えると、なるべく作らない方がいいという考え方もあります。もの作りに熱中するあまり、なるべく作りたいベンチャーとのギャップは、実はこういうところにあって、それをいかにアドバイスできるかに、成否が左右される。これが私たちの仕事の領域だと考えています。

―― もっとシステマチックに、製造の工程があるのかと思いましたが違うんですね。

菊地:ある程度の型はあると思います。しかし、ものづくり支援というと、設計や製造を受託したり、コンサルティングやマッチングを支援するプログラムが多いのではないでしょうか。確かにそういった工程でも課題は多く発生するのですが、ベンチャーというのはもっと基本的な部分、最終的にはそのプロダクトへの愛情や熱意の部分まで、遡って全体方針を設計するアドバイスをしなくてはならないと考えています。直接工場に行ってもHOWの部分は教えてくれないし、書籍を買っても教科書的なものは存在しない。そんな悩みを、ハードウェアスタートアップは抱えているのだと思います。

―― そこが大きなハードルになっていると。

菊地:
そうだと思います。日本人は実は面白いアイデアを持っているんだけど、HOWがわからないから止まってしまっていることが多いし、適切なアドバイスをしてくれるサポータが不足していますし、しかもその人たちが精神的に身近にいない。ベンチャーが出会いたいのは、工場ではなくサポータではないかなと思います。

石井:
ここだけの話しですが、菊地さんにはプロダクトづくり以外の相談も多くさせてもらいました。
例えば、なぜ私がそこまで粘土にこだわるのか、実は子供向けでなくてもいいのでは?等々…自分の心に再確認するというか、これがあったからこそ心の底からぶれることのないプロダクトの姿を明確に描くことに繋がっていきました。時には自分自身の答えが出るまで、すごく遅い時間でも話を聞いてくれて、正直ここまで密に支援いただけるとは思っていなかったので、本当に感謝しています。

菊地:
大企業の人とベンチャーの人がこんな近さで頻繁に会って、一つのゴールに向かうということは、それほど多い機会ではないと思います。39works、39Meisterはそれを大事にしています。

―― 企画段階から支援してくれたとのことですが、開発フェーズで助かったことはありますか?

石井:
はい、菊地さんはご自身でプロダクトを企画開発してきたというのもあって、いろんな経験をされています。だからプロセスを知っているので的確にアドバイスしてくれるんです。仮に私が独断で一歩一歩情報を仕入れたり調べながらやっていたら、ここまで早くかたちになっていなかったと思います。一緒にやり始めたのは2015年の7月で、8~9月でダンスのデジタル玩具から「nellco」にピボットし、グランプリ賞を受賞したのが10月です。

菊地:
実はその頃までこのプロジェクトに名前がなくて、「nellco」というネーミングとロゴも二人で食事をしながら考えたんです。このロゴはCGではなく、実際に粘土で作ったものを上から写真で撮っただけなんです。味のある良いロゴだと思っています。

石井:
「ネルコ」って普通にアルファベットで書いてもこうはならないけど、「L」を2つ並べることで子どもが伸びていくようなイメージを表現しています。

最終的には人と人の関係。熱い思いとアイデアがあれば、すべてが動き出す。

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―― 「nellco」は39Meisterの事例としてはスタンダードなものになるのでしょうか?

菊地:
はい。まさに我々が39Meisterで行いたいことをできた初のプロジェクトであり、プライオリティの高い案件です。企画段階から製品が成功するまでのプロセスに、受注発注の関係を越えて我々はどう関われるかを模索していた部分もありますが、いい方向に進められたと感じています。

―― 最後に「nellco」の支援を決定したポイントがあれば教えてください。

菊地:
“熱意”です。私は熱意があるかどうかが成功するかどうかのポイントだと思うんです。もちろんこれからたくさんの苦労があるだろうけど、熱意に裏打ちされた馬力があれば、たいていのことは乗り越えられる。その点、石井さんは非常に強い気持ちをお持ちです。

石井:
ハードウェアのみならず何かを作りたいという場合、熱意や勢いだけではどうにもならないこともあると思うのですが、39Meisterは熱意があれば話を聞くという姿勢なので、私と同じように悩んでいる方がいたらなんでも相談してみてほしいと思います。

菊地:
立場やバックグラウンドよりも、最終的には人と人の関係でものづくりは実現されていると考えています。こちらとしても、ベンチャーに負けないくらいの、支援をしたいという「熱意」を持って、今後も対応していくことを決意しています。そうすると、いつか化学反応が起こると信じています。

石井:
そうですね。僕は39Meister以前に、菊地さんの人柄にも惹かれましたし。なかなか一歩を踏み出すのは難しいけど、アクションを起こせば必ずこういう素晴らしい方々に出会えるんです。

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